「何度言っても分かってくれない」
「急に怒り出してしまう」
「介護を嫌がって、どうしたらいいか分からない」
認知症のある家族を介護していると、そんな場面に戸惑うことがあります。
認知症では、物忘れなどの中核症状だけでなく、怒りっぽくなったり、不安が強くなったり、歩き回ったり、介護を嫌がったりすることがあります。
こうした症状は、「周辺症状(BPSD)」と呼ばれています。
周辺症状について調べると、
「本人の気持ちに寄り添いましょう」
「関わり方を工夫しましょう」
と書かれていることも多いですよね。
もちろん、それはとても大切なことです。
でも、毎日介護している家族にとっては、
「そんなこと分かってる。でも、こっちもしんどいねん……」
と思う日だってあるのではないでしょうか。
介護する人も人間です。
いつも穏やかに、いつも正しい対応をするなんて、なかなかできません。
まずは、「周辺症状ってどんなもの?」を知るところから始めてみませんか。
分からないことが少し分かるだけでも、介護の不安が軽くなることがあります。
今回は、認知症の周辺症状(BPSD)にはどんなものがあるのか、まずは全体をやさしく見ていきましょう🌳
認知症の「周辺症状(BPSD)」ってなに?
前回の記事では、物忘れや見当識障害など、認知症によって脳の働きが低下することで現れる「中核症状」についてお話ししました。
今回お話しするのは、「周辺症状(BPSD)」です。
BPSDとは、「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の略で、日本語では「認知症の行動・心理症状」と呼ばれています。
少し難しい名前ですが、簡単にいうと、認知症のある人にみられることがある行動や気持ちの変化のことです。
以前は「周辺症状」と呼ばれることが多かったため、今でもこの言葉を聞くことがあります。
中核症状とは何が違うの?
中核症状との大きな違いは、認知症のある人すべてに同じように現れるわけではないということです。
BPSDは認知症による脳の変化だけでなく、不安やストレス、体調、痛み、生活環境、人との関わり、その人がこれまでどんな暮らしをしてきたかなど、いろいろなことが影響して現れることがあります。
だから、同じ認知症でも症状は人それぞれ。
そして同じ人でも、その日の体調や環境によって、症状が強くなったり落ち着いたりすることがあります。
ここで大切なのは、
「こんな症状が出たら、家族の接し方が悪い」わけではない
ということ。
いろいろな原因が重なって起こるからこそ、まずは、
「こういう症状が現れることもあるんだ」
と知っておくだけでも十分です😊
次からは、周辺症状(BPSD)にはどんなものがあるのか、一つずつ見ていきましょう。
周辺症状(BPSD)にはどんな症状がある?
周辺症状(BPSD)には、気持ちの変化として現れるものもあれば、行動として現れるものもあります。
ここでは、よくみられるものをいくつか紹介します。
不安・抑うつ
不安が強くなったり、気持ちが落ち込んだり、何をするにも意欲がわかなくなったりすることがあります。
認知症によって、自分の身の回りで起きていることが分からない不安を感じていることもあります。
妄想
実際には起きていないことを、本人にとっては事実のように感じることがあります。
よく知られているのが、財布などが見つからないときに「誰かに盗られた」と思う「もの盗られ妄想」です。
本人にとっては本当にそう思えているため、周囲が否定しても納得できないことがあります。
幻覚・幻視
そこにはいない人が見えたり、聞こえないはずの声が聞こえたりすることがあります。
本人には実際に見えたり聞こえたりしているように感じられるため、不安や恐怖につながることもあります。
興奮・暴言・暴力
大きな声を出したり、怒ったり、ときには物を投げたり、人を叩いたりすることがあります。
不安や混乱、痛みなど、本人がうまく言葉で伝えられないものが行動として現れている場合もあります。
ひとり歩き(徘徊)
家の中を歩き回ったり、外へ出て行ったりすることがあります。
周囲からは目的なく歩いているように見えても、本人は「家に帰る」「仕事に行く」「家族を迎えに行く」など、何か目的があって行動していることもあります。
介護拒否
入浴や着替え、食事、服薬など、必要な介護を嫌がることがあります。
「嫌がる=わがまま」とは限らず、何をされるのか分からなくて怖い、今はしたくない、痛い・寒いなどの理由が隠れていることもあります。
睡眠の乱れ・昼夜逆転
夜になっても眠れなかったり、夜中に起きて活動したり、反対に昼間に眠る時間が長くなったりすることがあります。
生活リズムだけでなく、認知症による睡眠の変化や日中の活動量、環境など、さまざまなことが関係します。
「周辺症状かも?」と思ったら、どうしたらいい?
「これって周辺症状なのかな?」
そう思っても、家族だけで原因を見つけたり、なんとかしようとしたりする必要はありません。
まずは、できるところからひとつずつ見ていきましょう。
まずは体調に変化がないか見てみましょう
まず覚えておいてほしいのは、いつもと違う様子がすべて認知症によるものとは限らないということです。
たとえば、急に落ち着かなくなったり、怒りっぽくなったりしたとき。
実は、
- どこかが痛い
- 便秘をしている
- 熱がある、体調が悪い
- 眠れていない
- 薬の影響がある
など、体の不調が隠れていることもあります。
特に「急に様子が変わった」というときは、「認知症が進んだのかな」と決めつけず、まず体調に変化がないか確認してみましょう。
そして、いつもと違う状態が続いている、急に症状が強くなった、体調の変化が気になるといったときは、かかりつけ医などへの受診も考えてみてください。
認知症のある方は、体の痛みや不調をうまく言葉で伝えられないこともあります。
「認知症の症状だと思っていたら、実は体調不良が隠れていた」ということもあります。
迷ったときは、家族だけで判断しようとせず、医師に相談してみましょう。
「いつ起こる?」をちょっと観察してみましょう
次に、本人の様子を少し観察してみましょう。
「いつ起こる?」
「その前に何があった?」
「どんなときは落ち着いている?」
そんなふうに見てみると、症状が起こるきっかけや、落ち着きやすい状況が見えてくることがあります。
たとえば、
「そういえば、お風呂の前になると嫌がるな」
「夕方になると落ち着かなくなることが多いな」
というような気づきです。
毎日細かく記録したり、家族だけで原因を突き止めようとしたりしなくても大丈夫。
気づいたことがあれば、それを専門職に伝えるためのヒントにしてみましょう😊
気づいたことを専門職に相談してみましょう
観察して気づいたことがあれば、かかりつけ医やケアマネジャー、地域包括支援センターなどに相談してみましょう。
そのとき、
- いつ頃から
- どんなことが起きているか
- 起こりやすい時間や場面
- どんなときは落ち着いているか
- 家族が何に困っているか
などを伝えると、専門職も状況を一緒に考えやすくなります。
もちろん、原因が分からないまま相談しても大丈夫です。
「こんなことで相談していいのかな?」と思わなくて大丈夫。
困っていることそのものが、相談していい理由です。
「介護する私がしんどい」も大切なサイン
そして、もうひとつ忘れないでほしいのが、介護している家族自身の状態です。
本人の症状がそれほど強く見えなくても、毎日一緒にいる家族にとっては大きな負担になっていることがあります。
「もうしんどい」
「イライラしてしまう」
「少し離れたい」
そう感じたときも、相談していいんです。
本人の症状をどうにかすることだけではなく、介護する人の負担を減らす方法も一緒に考えてもらいましょう。
まとめ|まずは「知る」ところから始めよう
認知症の周辺症状(BPSD)には、不安や妄想、介護拒否、睡眠の乱れなど、さまざまな症状があります。
こうした症状が続くと、
「どうしてこんなことするの?」
「これからどうなってしまうんだろう」
と、介護する家族も不安になりますよね。
でも、まずは「認知症では、こういう症状が現れることもあるんだ」と知るだけでも、少し見え方が変わることがあります。
そして、周辺症状が現れたからといって、家族の介護や関わり方が悪いわけではありません。
体調や環境、その人の感じていることなど、いろいろなことが関係している可能性があります。
「いつ起こるかな?」
「どんなときは落ち着いているかな?」
そんなふうに少し様子を見て、気づいたことを医師やケアマネジャーなどの専門職に伝えてみてください。
家族だけで原因を見つけて、家族だけで解決しなくても大丈夫です。
そして、介護しているあなた自身が「しんどい」と感じていることも、相談していいことのひとつです。
これから「こもれび日和」では、今回紹介した周辺症状について、ひとつずつもう少し詳しく取り上げていきます。
「こんなとき、どうしたらいいんだろう?」
そんなときに、介護が少しラクになるヒントを一緒に探していきましょう🌳✨
もっと知りたい方はこちら🌳
介護保険のしくみについて詳しく知りたい方はこちら
👉介護保険のしくみ
自宅で生活を続けたい方はこちら
👉自宅で受けるサービス(デイサービス・訪問看護など)
施設の違いなどについて知りたい方はこちら
👉入居するサービス(特養・グループホームなど)
費用を軽くする制度についてはこちら
👉高額介護サービス費ってなに?負担の上限と戻るしくみをやさしく解説
👉介護施設の費用を安くする方法|負担限度額認定をやさしく解説
認知症について知りたい方はこちら
👉認知症とは?症状・接し方・介護のヒントをやさしく紹介

