認知症の中核症状とは?物忘れだけじゃない認知症の症状
「認知症になると、物忘れがひどくなる」
これは、よく知られている症状ですよね。
では、物忘れ以外にはどんな症状があるでしょうか?
そう聞かれると、「うーん……🤔」となる方も多いのではないでしょうか。
認知症では、記憶すること以外にも、時間や場所が分からなくなったり、今までできていたことがうまくできなくなったりすることがあります。
こうした症状を知らないと、
「なんでそんなことするの?」
「前はできてたのに、どうして?」
と、介護する側も戸惑ってしまいます。
でも、「これも認知症の症状なんだ」と知っているだけで、見え方が少し変わることがあります。
「どうしてできないの?」と思うことも、本人がわざとしているのではなく、脳の働きの変化によって難しくなっているのかもしれません。
認知症になると現れやすい症状を知っておくことは、本人を理解するだけでなく、介護する家族の気持ちや負担を少し軽くすることにもつながります。
今回は、認知症の「中核症状」について、私が介護現場で出会った方のお話も交えながら、やさしく解説していきますね。
認知症の「中核症状」ってなに?
中核症状とは、認知症によって脳の働きが低下することで現れる、基本的な症状のことです。
「物忘れ」も、そのひとつです。
ほかにも、
- 時間や場所が分からなくなる
- 考えたり判断したりすることが難しくなる
- 物事の手順が分からなくなる
- 言葉や物の使い方が分からなくなる
など、さまざまな症状があります。
どんな症状が現れるかは、認知症の種類や進行の程度、その人によっても違います。
では、それぞれどんな症状なのか、普段の生活でよく見られる場面と一緒に見ていきましょう。
記憶障害
記憶障害とは、新しいことを覚えたり、覚えていたことを思い出したりすることが難しくなる症状です。
特にアルツハイマー型認知症では、記憶に深く関わる脳の「海馬」という部分から萎縮がみられることがあり、最近の出来事を覚えておくことが難しくなります。
たとえば、
- 同じことを何度も聞く
- 食事をしたこと自体を忘れる
- 約束したことを忘れる
- 物をどこに置いたか分からなくなる
といったことがみられます。
「ご飯、まだ食べてないんですけど」
長く介護の仕事をしてきて、記憶障害のある方から本当によく聞いたのが、
「私、ご飯まだ食べてないんですけど😟」
という言葉です。
私たちでも、
「昨日の晩ごはん、何食べたっけ?🤔」
と忘れることはありますよね。
でも、
「魚やったやん」
と言われれば、
「ああ、そうや!サバの味噌煮食べたな😆」
と思い出せます。
認知症の記憶障害では、「何を食べたか」ではなく、「食べたこと自体」が記憶から抜けてしまうことがあります。
そのため、
「さっき食べたでしょ!」
と言われても、ご本人にとっては「食べた記憶がない」ので、なかなか納得できません💦
私もそんなときは、
「お腹すきましたか?😊」
「晩ごはんは○時ですよ。楽しみにしていてくださいね」
と声をかけたり、少しおやつを食べてもらったりしていました🍪
無理に思い出してもらおうとするより、まず安心してもらう。
そうすると、落ち着かれることが多かったように思います。
見当識障害
見当識障害とは、「今がいつなのか」「ここがどこなのか」「目の前の人が誰なのか」などが分からなくなる症状です。
認知症によって、時間や場所などを把握する脳の働きが低下することで起こります。
たとえば、
- 今日の日付や季節が分からなくなる
- 昼なのか夜なのか分からなくなる
- 自宅にいるのに「家に帰る」と言う
- 慣れた場所で道に迷う
- 家族が誰なのか分からなくなる
などがみられることがあります。
「おはようございます!」……今から夜です
在宅で暮らしていた、認知症のある女性のお話です。
夕方、外を見て日が沈みかけているのに、勢いよく雨戸を開けて、
「おはようございます!!😊✨」
娘さんが、
「お母さん、今から日が暮れるのよ……😅」
と教えてあげる。
そんなやりとりが日常になっていました。
その方は、夕方なのに「朝が来た」と思っていたようです。
見当識障害があると、「今が朝なのか夕方なのか」といった時間の感覚が分からなくなることがあります。
周りから見ると、
「夕方なのに、なんで?😳」
と思うことでも、ご本人の中では新しい一日が始まった感覚だったのかもしれません。
失認・失行・失語
認知症では、見たり聞いたりしたものが何なのか分からなくなったり、今までできていた動作や会話が難しくなったりすることがあります。
少し難しい名前ですが、大きく分けると次の3つです。
- 失認:見えているのに、それが何なのか、誰なのか分からない
例:物の使い方が分からない、家族の顔が分からない - 失行:体は動くのに、今までできていた動作ができない
例:服の着方が分からない、歯ブラシをうまく使えない - 失語:言葉を話したり、理解したりすることが難しくなる
例:物の名前が出てこない、相手の言葉が分かりにくい
どれも、「見えていない」「体が動かない」「話したくない」からできないわけではありません。
脳の働きが低下することで、今まで当たり前にできていたことが難しくなるのです。
「知らない男が家にいる!」
施設で働いていたころ、比較的若く、体も元気な女性が入居してこられました。
身の回りのことも、ほとんど自分でできる方でした。
ところが、自宅で夫と二人で暮らしていたころ、夫の顔が分からなくなることがありました。
ずっと一緒に暮らしてきた夫なのに、
「知らない男が家にいる!!😨」
と警察に通報🚓💦
それが何度も続き、ご家族も困り果てて施設への入居を決められたそうです。
目はちゃんと見えている。
夫の顔も見えている。
でも、「この人は自分の夫だ」と認識することができない。
認知症では、このように見えていても「それが何なのか」「誰なのか」が分からなくなる失認がみられることがあります。
実行機能障害
実行機能障害とは、何かをするときに、順番を考えたり、段取りを組んだりすることが難しくなる症状です。
たとえば料理なら、
- 何を作るか決める
- 必要な材料を用意する
- 材料を切る
- 順番に調理する
といった一連の流れがうまくできなくなることがあります。
一つひとつの動作はできても、「次に何をすればいいのか分からない」ということが起こるのです。
「次、何をしたらいいの?」
施設で働いていると、体はしっかり動くのに、一人ではお風呂に入ることが難しい方がいました。
考えてみると、お風呂って意外とやることが多いんです🛁
着替えを用意する
↓
服を脱ぐ
↓
頭や体を洗う
↓
お湯につかる
↓
体を拭く
↓
服を着る
……こうして並べると、けっこう忙しい🤣
私たちは何気なくやっていますが、実はたくさんの工程を順番にこなしています。
実行機能障害がある方は、一つひとつの動作はできても、途中で「次は何をするんだっけ?」と分からなくなることがあります。
何も声をかけなければ、その場でじーっと待っている。
でも、
「次は服を脱ぎましょうか😊」
「今度は体を洗いましょう」
と、一つずつ声をかけると、スムーズにできることがありました✨
「一人でできない=何もできない」ではありません。
ちょっとした声かけや手助けがあれば、自分でできることはたくさん残っているんです。
判断力の低下
判断力の低下とは、そのときの状況に合わせて考えたり、どうすればいいか判断したりすることが難しくなる症状です。
たとえば、
- 季節や気温に合った服装を選ぶことが難しくなる
- 必要のないものをたくさん買ってしまう
- お金の計算や管理が難しくなる
- 危険かどうかを判断することが難しくなる
など、日常生活のさまざまな場面に現れることがあります。
周りから見ると「なんでそんなことするの?」と思う行動でも、本人なりに考えた結果、それを選んでいることもあります。
「真夏なのに、そんなに着るの?」
施設で働いていたころ、真夏なのにセーターや上着を何枚も重ね着して出てくる方がいました☀️🧥
一枚、二枚……
まだ着る。
そしてまた着る。
最後には、動きにくそうなくらい着込んでいました😂💦
「暑くないですか? 一枚脱ぎましょうか😊」
と声をかけながら、少しずつ脱いでもらっていました。
認知症によって判断する力が低下すると、季節や気温に合わせて服装を選ぶことが難しくなることがあります。
でも今思えば、その方には冷房が寒く感じられていたのかもしれません。
「認知症だから変なことをしている」と決めつけてしまうのではなく、
「もしかして寒いのかな?」
と考えてみる。
周りから見て不思議に思う行動にも、本人なりの理由が隠れていることがあります。
まとめ|症状を知ると「なんで?」が少し減る
認知症の中核症状には、物忘れだけでなく、時間や場所が分からなくなったり、今までできていたことが難しくなったりと、さまざまな症状があります。
こうした症状を知らないと、
「なんでそんなことするの?」
「前はできていたのに……」
と、家族も戸惑ってしまいます。
でも、「これも認知症の症状なんだ」と分かるだけで、本人の行動の見え方が変わることがあります。
できないことばかりを見るのではなく、少し声をかければできること、今も変わらずできることにも目を向けてみてくださいね。
そして、すべてを「認知症だから」で片づけず、「この人は今、どう感じているんだろう?」と考えてみることも大切です。
認知症の症状を知ることが、本人にとっても、介護する家族にとっても、少し楽に過ごすためのヒントになればと思います。
