居宅介護支援事業所でケアマネジャーとして働いていた頃、50代の女性・Aさんを担当していました。
Aさんは、ご主人と2人暮らし。
脳出血で入院し、命は助かったものの重い麻痺が残りました。
退院後は自宅で生活することになり、私が担当することになりました。
Aさんは、介護保険の第二号被保険者が利用できる「脳血管疾患」に該当したため、介護保険サービスを利用しながら自宅での生活をスタートしました。
自宅には介護用ベッドを設置し、週2回のデイケアでリハビリを受けながら、訪問リハビリでは家の中で安全に動く練習や、ご主人の車へ乗り降りするための訓練も続けました。
また、ご主人も仕事で日中は留守にされていたため、ヘルパーさんが食事や排せつの介助に入り、訪問看護師さんが体調管理や褥瘡(床ずれ)の予防を行いました。
Aさんは、食べることや出かけることが大好きな方でした。
「また主人と喫茶店へ行きたい。」
その思いがあったからこそ、リハビリにも前向きに取り組まれていたのを覚えています。
病気になったばかりの頃は、不安や戸惑いも大きく、精神的にも不安定な時期が続きました。
しかし、少しずつスタッフとの信頼関係ができるにつれ、Aさんの表情には笑顔が増えていきました。
それでも時には、
「主人に迷惑をかけていると思う……。」
「施設に入ったほうがいいのかな。」
と話されることもありました。
実際に、ご主人と一緒に施設を見学されたこともあります。
それでも、ご主人は無理に施設を勧めることはありませんでした。
最終的には、
「やっぱり家で暮らしたい。」
というAさんの気持ちを大切にされ、
「家でええと思うで。」
と、ご本人に寄り添い続けておられた姿が、とても印象に残っています。
Aさんは、若くして大きな病気を経験し、思うように体が動かない悔しさや不安を抱えておられたと思います。
それでも、ご家族や介護・医療スタッフに支えられながら、自宅での生活を続けられることを、本当にうれしそうに話してくださいました。
介護保険は、高齢者だけの制度ではありません。
40〜64歳でも、特定疾病が原因で介護が必要になった場合には、介護保険サービスを利用しながら、自分らしい生活を続ける助けになると感じた出来事でした。


