訪問介護をしていた頃、今でも印象に残っている利用者さんのお話です。
一人暮らしの60代男性のお宅を訪問していました。
その方は寝たきりで、一日中ベッドの上で生活されていました。
身体には拘縮があり、動かすと痛みが強いため、デイサービスの利用は難しい状態でした。
それでも、訪問診療、訪問歯科、訪問看護、訪問介護、訪問美容、そして訪問入浴。
さまざまな訪問サービスを組み合わせながら、一人で暮らしておられました。
発音は聞き取りにくいところがありましたが、意思疎通はできました。
私がヘルパーとして訪問していたのは、主に夜の時間帯です。
おむつ交換、水分補給の介助、飲み薬を飲むお手伝い、塗り薬を塗る介助などを行っていました。
訪問入浴があった日は、家に入った瞬間に、ふわっと石鹸の香りがすることがありました。
そして不思議と、その日は顔色もよく、全体的にすっきりされている印象でした。
「今日、お風呂に入れてもらった」
「気持ちよかった」
耳を近づけると、そう話してくださいます。
そういう日は表情もどこか穏やかで、ほっとされているように見えました。
お風呂に入ることは、私たちにとって当たり前のことかもしれません。
でも、安心してお湯につかって、ゆっくり体が温まって、少しでもリラックスできる時間があること。
それは、その人の生活の質を支えるうえで、とても大切なことなのだと感じた瞬間でした。


