こよりの介護体験談【認知症のAさんが遺してくれた、忘れられない言葉】

介護のはなし

介護の世界に入ってから、
私はほんまにいろんな現場を経験してきた。

デイサービス、特養、グループホーム、認知症デイ、訪問介護、地域包括、ケアマネ…etc
気づけば“転職魔”って言われてもおかしくないレベルで渡り歩いて、
今はまた別のグループホームで働いてる。

その経験の中で、忘れられへん人がいる。
私がまだ介護ひよっこで、認知症ケアなんて全然わかってなかった頃の話。 

毎日のようにぶつかってたAさん

その人は、負けん気が強くて、プライドが高くて、
でもすぐ忘れてしまうタイプのAさん。

まだ若くて未熟な私は、
ついAさんの言動にカチンときてしまって
何度も口論になった。

今思えば、お客さんに向かって何してんねんって話やけど、
当時は必死やったんよね。

それでもAさんは、不器用な優しさで
いろんなことを私に教えてくれた人やった。 

「もう帰られへん気がするねん…」

しばらくしてAさんは癌になって入院した。
しかも末期で、もうグループホームには戻れへん状況。

でも、その事実はAさん本人には知らせられなかった。

私は夜勤明けの眠たい身体を引きずって、
何度も病院へお見舞いに行った。
会いたかったし、会わずにいられへんかった。

ある日、Aさんがぽつりと言った。

「私、もうグループホームには帰られへん気がする…」

その弱音を聞いたのは、後にも先にもその一度だけ。

私は胸がぎゅってなった。
でも強がって、

「そんなこと言わんと。
 Aさんがおらんと、やり合う相手がおらんくて寂しいやん」

って冗談めかして返した。 

そして、最後の言葉

そしたらAさんが、ゆっくり私のほうを見て言った。

「……あんたの心は燃えてるか?」

「え?」思わず固まった。

続けてAさんは、小さい声で、でもはっきりと言った。

「私の心は、燃え尽きた。
 心は、いつも燃やしとかなあかん」

それが、Aさんと交わした最後の会話だった。 

あれから何年も経つけど

介護の仕事って、
ぶっちゃけしんどいことも多いし、
辞めたいと思ったのなんて何万回もある。

人間関係で悩むこともあるし、
体が悲鳴をあげることもあるし、
感情が追いつかへんこともある。

でも、そのたびに
Aさんのあの言葉がよみがえるんよ。

「あんたの心は燃えてるか?」

Aさん、ありがとう。
こよりは今も、なんとか、
小さな火を絶やさんように燃やしてるで。

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