なんかもう、
いろいろ重なって。
体も、心も、ぱんぱんで。
「海が見たいなあ」って、
ふと、思った。
夕暮れの道を、夫と車で
ただ、なんとなく走る。
どこに行くかなんて、決めてなかった。
気づいたら、海に来てた。
西の空が、
ゆっくり、ゆっくり
オレンジ色に染まっていく。
しばらく、何もしゃべらず、
波の音だけを聞いてた。

ひんやりとした波。
ざらざらとした砂。
潮の香りが、鼻の奥をくすぐった。
思えば、
こんなふうに、
何もしないでただ立つ時間なんて
いつぶりやろ。
ああ、
わたし、ちゃんと生きてるなあ、って思った。
また、疲れたら
海を見に行こう。
しゃべらんでも
裸足にならんでも
ただ、
「いまここ」に立つだけで
十分やと思えたから。


